谷原さんが転校してきてから、私の日常は少しずつその色を変えていった。
変わらないのは、晴人との毎朝の通学と、晴人の部活がない日に一緒に帰る放課後だけ。
だけど、谷原さんが私たちの間に加わることで、私と晴人の間にあった「当たり前」の距離が、少しずつ遠ざかるように感じられていた。
そんな中で、家の近所の神社で開催される秋祭りのポスターが町内に貼りだされた。
「秋祭り、来週末にあるんだ」
学校の廊下の掲示板を見ながら、私は呟く。
「美波は、今年も晴人くんとお祭り行くの?」
隣を歩いていた友達の亜子が、私に尋ねてくる。
「うん。できれば今年も、晴人と一緒に行けたらなって、思ってはいるんだけど……」
地元のお祭りということもあり、私は小さな頃から毎年、晴人と一緒に行っていた。
毎年、秋になると、晴人と他愛もない話をしては「今年も行けたらいいな」なんて笑い合いながら話していた。
ふと掲示板から廊下に目をやると、晴人の後ろ姿を発見。
どうしよう。緊張するけど、ここは思いきって、晴人を秋祭りに誘ってみようかな?
私は、晴人の背中に向かって口を開く。
「はる……っ」



