その日の放課後。私は教室で一人、荷物をまとめていた。
クラスメイトのほとんどが帰ってしまったなか、ふと、机のそばに人影が立つ。
ハッとして顔を上げると、谷原さんがこちらを見て微笑んでいた。
えっ、いきなり何だろう?
予想外の人物の登場に、思わず身構えてしまう私。
「ねぇ、真田さん。これから帰るの?」
「うん、まぁ……」
「私、新しい友達ができるか不安でさ。でも、真田さんみたいに明るくて、誰からも慕われる子と仲良くなりたいんだよね!」
えっ。谷原さん、私と仲良くなりたいって思ってくれてるの?
谷原さんの瞳は真っ直ぐで、悪意は感じられなかった。
もしかして、思っていたよりも良い子そう?
一瞬、安堵の気持ちが胸に広がる。
けれど……もしかしたらこれは、彼女が晴人に近づくための口実かもしれない。
そんな疑念が、頭の中をよぎった。
何事もすぐ鵜呑みにせず、疑い深くいかないとダメだよね。
「そっか。でも、谷原さんなら、きっと大丈夫だよ。少しずつクラスに馴染めているし、仲の良い友達もすぐにできるって!」
私は精一杯の笑顔を作って、曖昧にそう言うことしかできなかった。
「はぁ……」
谷原さんが去ったあと、私はため息をつく。
私だって、谷原さんみたいにもっと普通に話せたら……。そんなことを考えても、何も変わらないのに。



