「石川くん、よろしくね」
なんと谷原さんの席は、偶然にも晴人の隣だった。
「おう。何か分からないこととかあったら、遠慮なく聞いてくれよな!」
人懐っこい笑みを浮かべながら手を差し出す晴人に、谷原さんも自分の手を重ねる。
晴人とは、もう随分と長い間、あんなふうにお互いの手を握ったりなんてしていないな。
握手する二人を、私は離れたところから複雑な気持ちで見ていた。
休み時間になると、彼女の周りにはあっという間に人だかりが。
「ねえ、前の学校はどんな感じだったの?」
「友梨ちゃんって、呼んでもいい?」
「いいよ、もちろん!」
谷原さんは誰とでも気さくに話し、あっという間にクラスに馴染んでいった。
昼休み。メロンパンを片手に、晴人のほうに視線をやると、谷原さんが晴人に話しかけているのが見えた。
「ねえ、石川くん。この問題の解き方、教えてくれない?」
谷原さんは自然な動作で晴人の机に近づき、少し身を乗り出すように話しかける。
その距離の近さに、私は内心ヒヤッとした。
谷原さんの黒髪が、晴人の肩に触れそうなほど近い。



