あれから1週間。晴人とは変わらず毎朝一緒に登校し、放課後も晴人の部活がないときは一緒に帰る日が続いていた。
そんな変わらない、いつも通りの日常が、まるでガラス細工のように脆いものだと、そのときの私はまだ知らなかった。
あの朝、教室のドアが開くまでは。
* * *
ある日の朝。ホームルームが始まる前のこと。
「おーい。お前ら、席につけー。朝礼始めるぞ」
いつものように教室に入ってきた担任の先生が、少し緊張した面持ちで教室のドアを開ける。
「みんな、静かにしてくれ。今日は、新しい仲間を紹介するぞ」
えっ、新しい仲間って……もしかして、転校生!?
クラス中がざわめく中、先生に促されて入ってきたのは、すらりとした背丈の女の子だった。
艶やかな長い黒髪はストレートに下ろされ、くりっとした大きな瞳が印象的だ。流行に敏感そうな、大人びた雰囲気を持っている。
「谷原友梨です。よろしくお願いします!」
谷原さんは、にこやかに自己紹介をした。その声は明るく、淀みがない。
その屈託のない笑顔に、すぐにクラスの雰囲気に溶け込めそうな子だと直感で分かった。
けれど、その悪意のなさが、かえって私の胸をざわつかせた。
そして、私の不安はその直感通りになっていく。



