朝の7時半。窓から見える青い空には、もくもくと入道雲が浮かんでいる。
じっとりとした湿気が肌にまとわりつき、早くも体力が奪われそうだった。
「おーい、美波! 早くしないと、遅れるぞー!」
真田美波、17歳。
私の朝はいつも、彼──石川晴人の声で始まる。
来た、晴人……!
玄関の向こうから聞こえる声に、急いで洗面所で顔を洗い、鏡を見た。
肩にかかるくらいの茶髪は、昨夜巻いた名残でゆるくウェーブしている。
小柄な体を夏服の白いブラウスに包み、少しでも可愛く見えたらいいなと、こっそり願いを込めた。
玄関先へ小走りで向かうと、幼なじみの晴人が待っていた。
「美波、遅いよ」
彼の顔には、少し呆れたような笑みが浮かぶ。
バスケットボール部で鍛えられた細身の体に、少し癖のある黒髪は朝日にきらめいていた。
私よりも頭一つ分背が高く、見上げるたびに頼もしく感じる。
その爽やかな姿に、すでに熱を帯びた私の胸はさらに大きく高鳴った。
「もう、晴人ったら! あとちょっと待ってくれたっていいじゃない」
「はぁ? ったく、何言ってんだよ。お前は毎朝ギリギリなんだから。9月とはいえ、本格的に暑くなる前に行かないと、学校着く頃には汗だくだぞ?」
晴人は、そう言って笑った。
なんだかんだ言いつつも、いつも朝ギリギリな私を、晴人は毎朝こうして家の前で待っていてくれる。
その優しさが嬉しくて、同時に少し切ない。なぜなら、私たちはただの親友だから。



