蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 「……私は」


 リディアは初めて、誰にも見せなかった本音をこぼす。


 「ずっと、“選ばれる”ことがすべてだと思っていたの」


 幼い頃から、姉として、王女として、優秀であることを求められ続けた。
 誰よりも努力した。誰よりも、完璧であろうとした。


 「でも、肝心な場面で“選ばれた”のは、セレナだった。あの子は私よりもずっと……人の心を惹きつける」

 「それは、彼女が“強い”からだよ」


 シオンの声が、真っ直ぐに返ってくる。


 「君は“正しくあろう”とした。だが、彼女は“愛そうとした”。――それは強さだ。だが、君のような誇りもまた、王家にとっての支えだ」


 リディアは、まっすぐにその目を見つめる。
 その瞳には、憐れみも蔑みもなかった。
 ただ、対等な者としての、理解と敬意が宿っていた。


 「……変わった方ね」

 「よく言われる」


 ふっと、リディアが笑った。

 それは涙の後、初めて浮かんだ、ほんの少しの“素顔”。

 その夜遅く、リディアは自身の私室に戻ると、机の引き出しから便箋を取り出した。


 筆先が揺れる。
 それでも、短い言葉が紙に綴られていく。

 セレナへ
 少し、話がしたいの。
 できれば、ふたりきりで。

 それは、姉としてではなく、
 “ひとりの女”として、“ひとりの妹”へ送る言葉だった。