問いかけるリディアの目元には、まだ涙の痕が残っていた。
シオンはそれを見ても、何も言わずに静かに扉を閉める。
「……舞踏室には音がよく響く。思考の整理に丁度いい場所だと思っていたのだが」
「……思考の整理、ね。あなたも?」
「……ああ。君も、そうだろう?」
その淡々とした口調に、リディアはかすかに息をのむ。
彼が、自分の涙に目を向けなかった理由が、少しだけわかった気がした。
「……いっそ、無神経に慰めてくれた方が楽だったかも」
「私は君に“憐れみ”を投げるつもりはない。君はそんなものを欲しがるような女ではないからな」
ぴたりと、言葉が止まった。
静かな肯定。
それはこの数週間、誰からも聞けなかった言葉だった。



