その事実が、まだ信じられなかった。
嬉しさと同時に、こわばるような緊張もあった。
そこへ――
「遅くなったな。緊張させてしまっただろうか」
低く穏やかな声とともに、アグレイスが部屋へと入ってくる。
「……いえ。私、ただ……」
セレナが言葉を探していると、アグレイスは静かに近づき、彼女の頬に手を添えた。
「今日のそなたは、どの瞬間も美しかった。誇らしく、凛々しく、そして――とても可憐だった」
「……っ」
そのまなざしに見つめられ、セレナの胸は早鐘を打つ。
戸惑いと羞恥が入り混じる。
けれど、その腕の中に抱き寄せられたとき――不思議と、怖くはなかった。



