それから、
月明かりの差す王妃の間で、アグレイスは再びセレナに言う。
「この国の未来に必要なのは、“誰かに従う花嫁”ではなく、“共に歩む者”だ。そなたは、もう十分にその器だ」
「……でも、まだ私は何も……」
「わたしの心に咲いた花は、もう誰にも奪わせない」
アグレイスの瞳に映るのは、ただ一人、セレナ。
その言葉に、彼女の胸は熱く締めつけられた。
ふたりはゆっくりと抱き合う。
静かな夜、寄り添うその距離は、恋と誓いを重ねて、確かに深まっていた。
夜が更け、王宮の祝宴も静かに終わった頃。
セレナは、今までとは違う部屋――正式に“番妃”として与えられた王妃の間へと案内されていた。
侍女たちに軽く身支度を整えてもらった後、静かに扉が閉じられる。
月明かりに照らされた寝室は、白銀と深藍の静かな調和で満たされていた。
(……本当に、番妃になったんだ)



