その瞬間。
神官が蒼銀の指輪を差し出し、アグレイスがそれをセレナの薬指にはめる。
「この指輪は、我が心と、王家の名における永遠の証だ。……そなたを誰よりも大切にしよう」
その手は、まっすぐで、揺らがない。
指輪のひんやりとした感触に、セレナは唇を噛んだ。涙がこみ上げてくる。
「……私も、あなたと共に生きていきます。この手が、どれほど頼りなくても――あなたの隣に立てるように、努力を続けます」
セレナの返答に、参列者たちは静かに息をのんだ。
それは、花嫁の言葉というよりも、“未来を背負う者の誓い”だった。
儀式が終わると、王宮の広場で祝宴が開かれた。
民衆にも公開されたその光景に、セレナはやや戸惑っていた。
だが、アグレイスは彼女の手を取り、人々の前で宣言する。
「この者が、我が番妃――未来の王妃だ」
歓声があがり、花びらが舞う。
民の笑顔が、セレナの心をあたためてくれた。



