「……これをつけて、胸を張って歩け。そなたは、わたしの選んだただ一人の花嫁なのだから」
その言葉に、セレナの瞳が潤んだ。
「はい……ありがとう、アグレイスさま」
静かにうなずくその姿は、もう“試される側”ではなかった。
ひとりの女性として、自らの愛と覚悟を胸に抱いた“番妃”の顔だった。
王都での暮らしは、思いのほか静かだった。
それでも、宮廷の空気には見えない重みがあった。
挨拶、食事、振る舞いの所作、言葉選び――
すべてが“番妃”として相応しいか、測られているような感覚。
けれど、セレナはくじけなかった。
日々アグレイスと過ごした神殿での穏やかな時間が、心の支えだったから。



