その夜。
セレナは自室の窓辺に座り、王都の星空を見つめていた。
風がそっと、髪を揺らす。
緊張で冷えた指先に、温かな手が重なる。
「セレナ。今日はよくがんばったな」
振り返れば、アグレイスがそこにいた。
見上げると、彼は微笑みながら小さな箱を差し出した。
「これは?」
「そなたのために、細工師に頼んだ。……都での暮らしは、何かと揺さぶられるだろう。だが、これは“わたしの番妃”であるそなたの証だ」
中に入っていたのは、白銀のブローチ。
羽根と花が重なる、優しく繊細な意匠――“守護”と“希望”を象徴する紋だった。



