蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 王都は、思い出よりもずっと、まばゆかった。

 白い城壁、華やかな宮廷、豪奢なドレスの貴婦人たち。
 久しぶりに戻った都の景色は、美しさと同時にどこか冷たい。

 神殿のようなぬくもりは、そこにはなかった。


 「……あれが、“蒼銀の番妃”かしら?」

 「田舎育ちって聞いたけれど、意外と可愛らしい顔立ちね」


 宮廷の女性たちがひそやかに言葉を交わす。
 セレナは、その視線を感じながらも背筋を伸ばした。

 けれど――その声が、すべてを貫いた。


 「まあ、可愛らしい妹。ずいぶん雰囲気が変わったわね」


 その場の空気が、ひやりと凍りつく。
 セレナが振り返ると、そこにはかつての姉――リディアが、笑みを浮かべて立っていた。