王都に到着したその日。 セレナは、案内役の老執事に連れられて、宮殿の一室へと通された。 「このお部屋は……」 思わず口をついて出たのは、懐かしさではなく、記憶の痛みだった。 この部屋は、かつて彼女が幼い頃に与えられていた、“王女として最低限の体面を保つため”だけに設けられた部屋だ。 精緻な装飾。磨き抜かれた床。けれど、そのすべてがどこか冷たい。 (……帰ってきたんじゃない。呼ばれただけ) 自分に言い聞かせるように、セレナはゆっくりと息を吸い込んだ。