蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 真っ直ぐに告げたその声に、アグレイスは目を細め、立ち上がった。

 そして、そっと彼女の手を取り、顔を近づける。


「もう十分、そなたはわたしを支えている。こうして、そばにいてくれるだけで」


 そのまま、唇が、そっとセレナの額に触れた。
 胸が高鳴り、息が止まりそうになる。


「……だが、もっとそばに来てくれるなら、それは……わたしの願いでもある」

「……!」


 まるで、恋の言葉のようだった。
 けれどアグレイスはそれ以上なにも言わず、セレナを静かに抱きしめた。

 そこにあるのは、甘く、穏やかで、揺るぎない温もり。


(この人の隣に――もっと、ちゃんと立てるようになりたい)


 その想いが、静かに芽を伸ばしていく。


 やがて訪れる嵐の前に、ふたりの絆は、静かに、でも確かに強く結ばれていく――そんな感じがした。