「でも……私、本当にこの場所にふさわしいのかな、って思ってしまうんです。あなたの隣にいるには、何も足りなくて……」
「違う」
アグレイスの声が、静かに重なった。
「そなたは“足りない”のではない。そなたがそばにいることで、わたしは満たされる。それだけで、もう十分なのだ」
セレナの手が震える。
そのまま、そっと抱きしめられた。
「そなたは、わたしの光だ。――迷わなくていい。わたしが導く」
その言葉は、深く、優しく、胸に響いた。
(……ありがとう、アグレイスさま)
不安が消えたわけではない。
けれど、彼の腕の中でなら、どんな風にも立ち向かえる気がした。



