その夜。
セレナは、神殿でひらかれた茶会に出席していた。
名のある貴族令嬢たちが、神殿に仕える名目で参加している――
だが、彼女たちの本当の目的は、セレナを“値踏み”することにあった。
「とてもお優しそうで、素敵な番ですわね」
「でもまあ、お育ちが特別なわけでは……少々素朴すぎるところもあるかしら」
笑みを浮かべながら繰り出される、やわらかい棘。
セレナは俯かず、笑顔でかわしていた。
けれど、心は静かに擦り減っていた。
「セレナ、少し外へ出ようか」
茶会が終わったあと。
どこかで見ていたのか、アグレイスが迎えに来てくれた。



