蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 夏の終わりを思わせる風が、神殿の庭に吹き抜けていた。
 木々の葉がさらさらと鳴る音が、遠い鈴のように響いている。

 セレナは、薬草の手入れをしながら、そっと目を細めた。

 穏やかな日々。
 けれど、心のどこかに、小さな波紋が揺れている。


(……あの人たちの視線)


 神殿の女官たちの一部が、自分のことをひそやかに見ているのを、セレナは感じていた。

 以前のような露骨な敵意ではない。
 けれど、敬意とも違う。
 まるで、「見定める」ような目。


(私が、アグレイスさまの“番”だから……?)


 そう思うと、胸がきゅうっと縮むようだった。