その夜。
セレナはアグレイスとともに、神殿の静かな回廊を歩いていた。
虫の声。風の音。空には淡い星。
「……あの子に、私ができたことなんて、ほんの少し。でも……助けたい、って思ったんです」
「“助けたい”という心が、すでに力だ。誰もが持てるわけではない」
そう言ったアグレイスは、ふと立ち止まり、セレナの手を取った。
「セレナ。今日、そなたがあの子を守ったように――わたしは、いつでもそなたを守る」
「……ありがとう、ございます」
小さくつぶやいた声に、アグレイスはそっと彼女の髪を撫で、そっと額に口づけた。
ただそれだけで、胸がきゅっとなる。
(この人のそばにいたい。ずっと……)
言葉にしなくても、ふたりの距離は、また一歩、確かに近づいていた。



