蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 神殿の朝は、どこかざわついていた。
 清らかな空気の中に、かすかに緊張感が漂う。

 セレナは、神殿の司薬官・ナリエルから急ぎ呼ばれ、薬草庫へ向かっていた。


「セレナさま、申し訳ありません! 弟子が中で……倒れていて」

「え……! 怪我人がいるんですか?」

「はい。中で誤って蒸留薬を倒してしまったようで……気を失っています。毒性は弱いですが……」


 言い終える前に、セレナはためらいなく中へ駆け出していた。

 まだ慣れない香や薬草の匂いが混ざる庫内。
 薬壺が割れ、床には蒸気がたちこめていた。