その夜。場所は変わって、王都。 静かな屋敷の奥、紅を挿した長い指が硝子の窓辺をなぞっている。 「……正式に“番”になったのね、セレナ」 呟いた声は冷たくも、どこか優しげだった。 鏡の中には、セレナによく似た、しかしどこか艶めいた女が映っていた。 王妃候補であり、元第一王女・リディア。 「あなたの幸せを、願ってるわ。ええ、とても……心から」 微笑んだ唇が、まるで花のように咲いた。 だが、その笑みは――凍るように冷たかった。