神殿の裏手、小さな庭に出ると、夜の帳がそっと降りていた。
天には星が一つ、二つ……そして、無数の銀が散りばめられていく。
アグレイスはその中で静かに立ち、セレナの隣に寄り添った。
夜風がやわらかく吹き、ふたりの髪がふわりと揺れる。
「今日、そなたが神官たちに言葉をかけたとき……わたしは誇らしかった」
「そんな、大げさです」
「いいや。民のために心を尽くすことは、何より尊いことだ。政や知識など、後からいくらでも学べる。だが、心は育てられぬ」
そう言ってアグレイスは、ふいにセレナの肩にそっと手を置いた。
「そなたの心に、わたしは救われている」
「……わたし、あなたの隣に立てますか?」
「もう立っておる。わたしの番として、そして――」
言いかけた言葉は、夜風にさらわれた。
でも、セレナにはなんとなく、それが“番”ではなく“愛しい人”と呼びかけようとしたのだとわかった。



