蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 午後、神殿の小庭にて。
 セレナは初めて、神官たちに挨拶をする場を設けられた。

 皆が膝をつき、「番さま」と頭を垂れるその姿に、セレナは一瞬戸惑う。

 けれど。


 「私など、まだ未熟ですが……皆さまの手を借りながら、少しでも、この神殿を大切に守ってゆきたいと思っています。……どうぞ、よろしくお願いいたします」


 緊張しながらも、まっすぐな気持ちで告げたその言葉に、神官たちの間から静かな拍手が湧いた。

 その音は、セレナの胸をそっと撫でてくれた。

 夕暮れが神殿を淡い紫に染める頃、セレナはひとり、渡り廊下を歩いていた。
 昼のあわただしさが嘘のように、世界は静けさに包まれている。
 その静けさが、今日一日の出来事を、ゆっくりと心に沁みこませてくれるようだった。


 (……不思議。とても緊張していたはずなのに、疲れてない)


 たぶん、それは――

 「セレナ」


 声がして、振り向けば、そこにアグレイスがいた。

 薄明かりの中、その姿は光の輪郭を纏ったように美しく、けれど穏やかで。
 彼の瞳がまっすぐに自分を見ているのを感じた途端、セレナの胸はきゅうっと熱くなる。