「セレナ」
その名を呼ばれるだけで、胸が高鳴る。
けれど彼女は、それをどう表してよいのかわからず、思わずぺこりと頭を下げてしまう。
「おはようございます、アグレイスさま……」
「ふふ。そこまでかしこまらずともよい。今朝のそなたは、陽だまりの中に咲く花のようだ」
さらりと口にされる言葉に、セレナの顔がほんのり赤く染まる。
「もう……そういうの、ずるいです」
「何が?」
「……知りませんっ」
拗ねたようにそっぽを向いたセレナの頬に、アグレイスはそっと指先を添える。
「そなたがこうして笑っていられることが、わたしの望みなのだ」
その低く柔らかな声が、胸の奥にじんと染み渡る。
朝食は、神殿内の私室に用意されていた。
アグレイスと並んで、簡素ながらも美しく盛りつけられた料理をとる。
セレナは少し緊張しながらも、穏やかな食卓に心を和ませていた。



