式が終わり、人々の拍手の中、アグレイスがそっと彼女の手を握った。
「誇っていい。そなたは、誰よりも真に強く、美しい」
セレナは小さくうなずき、笑った。
「ありがとう、アグレイス。あなたがいてくれるから、私はここにいられる」
二人の瞳は重なり、そして確かな未来を見つめていた。
王宮の一室――アグレイスが用意した私室は、広くはあったが無駄のない造りだった。
深い藍色のカーテン、銀の文様が施された家具、暖炉に灯る静かな火のゆらめき。
まるで彼そのもののような、重厚で落ち着いた空間。
セレナは窓辺に腰かけていた。
昼の宣誓式が夢のように感じるほど、夜はしんと静まり返っている。
彼女の隣に、アグレイスがそっと座る。
「今日のそなたは、誇り高かった。……いや、それ以上に、美しかった」
その言葉に、セレナの頬がぽっと染まる。
「そんな、私は……ただ、一生懸命だっただけで……」
「その“真心”が民に届いたのだ。言葉ではなく、魂で」
アグレイスの声は、火の揺らめきに似たやさしさを帯びていた。



