「……どうして、そこまで……私なんかに、そんなに優しくしてくれるの?」
「そなたが、わたしの“望み”だからだ」
「望み……?」
「魂が、そなたを選んだ。どれほど世界を彷徨っても、そなたでなければ満たされぬ」
胸の奥が、じんわりとあたたかくなる。
ただの“番”という役割ではなく――“私という存在”を、彼は求めてくれている。
(こんなふうに思われる日が、来るなんて……)
気づけば、アグレイスの胸元に顔をうずめていた。
彼の腕が、そっと背を抱いてくる。
どこまでもやさしいその抱擁に、セレナは身を委ねた。



