蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 「……どうして、そこまで……私なんかに、そんなに優しくしてくれるの?」

 「そなたが、わたしの“望み”だからだ」

 「望み……?」

 「魂が、そなたを選んだ。どれほど世界を彷徨っても、そなたでなければ満たされぬ」


 胸の奥が、じんわりとあたたかくなる。
 ただの“番”という役割ではなく――“私という存在”を、彼は求めてくれている。


 (こんなふうに思われる日が、来るなんて……)


 気づけば、アグレイスの胸元に顔をうずめていた。
 彼の腕が、そっと背を抱いてくる。

 どこまでもやさしいその抱擁に、セレナは身を委ねた。