「アグレイス……」
名前を呼ぶと、彼はそのまま、彼女の手を包み込んだ。
「わたしは、今日のそなたが愛しい。震えながらも、わたしを信じてくれたそなたが、誇らしい」
言葉の一つひとつが、セレナの胸を甘く撫でていく。
頬が熱くなる。
でも、怖くはなかった。
「ねえ、アグレイス……」
「なんだ?」
「手を……もう少し、握っていてもいいですか?」
「ああ。夜が明けても、離さぬ」
そう言って、彼は指先を絡め、強く、でも優しく彼女の手を握った。
その繋がりは、まるで心を重ねるようだった。
夜は深く、聖域の空は月に照らされ、静謐に包まれていた。
寝台の上、寄り添うふたりの間には、そっと流れるような沈黙があった。
セレナは、胸の鼓動を隠せずにいた。
手を握ったままのアグレイスが、あたたかな体温で包んでくれている。



