「これで……終わったんですね?」
「ああ。これより、そなたはわたしの番。わたしの大切な存在だ」
その言葉は、正式な“絆”の証明であり、恋の告白にも似ていた。
その夜、儀式を終えたふたりは神域の一室に案内され、
“番としての初夜”を静かに過ごすこととなった。
とはいえ、それは決して強制的なものではない。
ただ、“魂の記憶を馴染ませる”ために――
神獣とその番は、儀式の夜を共に過ごす習わしがある。
部屋の中は、温かな灯火に照らされ、
窓からは静かな月光が差し込んでいた。
セレナは、寝台の端に腰掛けながら、小さく息をついた。
「……緊張してます。どうしたらいいのか、分からなくて」
「そなたが望まぬことは、何ひとつしない。心を重ねるのも、少しずつでいい」
アグレイスの声は穏やかで、どこまでも優しかった。
そっと隣に座った彼の手が、セレナの指先に触れる。
それだけで、胸が高鳴った。



