蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜





 「セレナ……!」

 「アグレイス、これが“契約”の正体よ。
 守るべきだったのは、力や血筋じゃない。“痛み”を見つめる勇気と、“それを越える心”だったのよ」


 彼女は、石板を掲げる。

 “契約”が呼応し、空に巨大な魔方陣が浮かび上がった。
 けれど今回は、封印ではない。

 “開放”だった。

 苦しみも、矛盾も、見たくなかった記憶もすべてを認め、
 その上で新しい契約を――「赦しの誓い」を――刻むための儀式。

 やがて、光が空を満たす。

 爆風のような魔力の嵐が吹き荒れる中で、セレナはしっかりと立ち、詠唱を紡いだ。


 「汝が名を呼ぶ。
 過去を閉ざすのではなく、明日へと繋がる門を――
 永久に眠らせるのではなく、共に歩む力を」


 魔方陣が弾けるように開き、空と地が溶け合う。
 それは、“和解”という名の奇跡だった。

 そして。

 あらゆる魔力が静まったとき、空は澄みわたり、風はやさしく吹いていた。
 新しい朝が訪れた。