「古き誓いに倣えば、おぬしらの魂は“双星”として天に記されるだろう。
ならば我らも、その記録者であらねばなるまい」
重々しく頭を垂れたその瞬間、広間に重ねられていた空気がようやく和らいだ。
セレナは、心の奥にじわりと温かいものが広がっていくのを感じた。
(私の声が……届いた。少しでも、誰かの心に)
だがその刹那、広間の扉が勢いよく開いた。
「緊急報告! 北境より伝令――魔族の軍が境界線を越えたとの報!」
会場が凍りついた。
「まさか……和平の交渉は進んでいたはずでは……!」
アグレイスがすぐに指示を飛ばす。
「全軍に非常令を通達! ただし、先制攻撃は行うな。
この動きが“真の戦意”によるものか、確認を急げ!」
セレナもすぐに動く。
「魔術院と精霊院の協力を仰いで。封域の歪みや、何らかの干渉があったかもしれません。必要なら私が北へ出ます」
誰もがその判断の速さに息を呑んだ。
かつて“王妃”とはただの象徴であり、儀礼の存在だった。
だが今、セレナは――国の命運に直に関わる存在として、確かにその場に立っていた。
アグレイスは彼女にだけ聞こえるような声でささやく。
「君がいてくれて、本当によかった」
彼女は、まっすぐに彼を見返す。
「いいえ、あなたが信じてくれたから、私はここにいられるのよ」
二人の絆は、王国の未来を切り開く灯火となっていた。
北境の異変は、すぐさま王国中枢へと緊張を走らせた。
セレナは精霊院の高位召喚士たちと連携を取りながら、魔力の乱れと干渉を探る。
空間の揺らぎは、ただの侵攻というには不自然だった。何かが――もっと大きな“力”が働いている。



