蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 ――新しい時代が始まろうとしていた。
 王都中心部にそびえる「黎政の間(れいせいのま)」は、王国における最上級の政議が行われる場所だった。
 この日、その大広間には貴族の重鎮、軍の司令官、魔術院の賢者たち、各都市の代表、そしてかつて国を支えた元老たちが一堂に会していた。

 会場は、ぴんと張りつめた空気に満ちていた。
 セレナとアグレイスが並んで現れた瞬間、いくつもの視線が彼らを刺すように注いだ。


 「……あの娘が“番”か」
 「まだ若い……とても王族の隣に立つ器とは思えぬ」
 「だが、アグレイス殿下がここまで公に出した以上……何かあるのか?」


 そんなささやきが聞こえてくる。だが、セレナは一歩も退かなかった。


 (この視線にも、言葉にも、慣れたわ。だけど今日は――ただの“妃”ではない、私の意思を伝えるためにここに来た)


 壇上に立ったアグレイスが、広間を静かに見渡す。



 「今日ここに集ってもらったのは、ひとえに――王国の存亡にかかわる真実を、皆に伝えるためだ」


 重い沈黙が落ちた。