蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 ***


 眩い光の中、彼女はかつてないほどの量の“記憶”を受け取った。
 遠い時代に交わされた、王族と番妃の間の〈契約〉。
 王と番妃は魔力の均衡を保ち、国と自然界の調和を繋ぐ“対”として存在する定め。

 しかし、時代が進むにつれ、王権と儀式の制度により、番妃の“心”は軽視され、ただの「神託の容れ物」となっていった。


 「私たちの歴史は、誤った伝承によって歪められてきた……
 だが、あなたたちの世代でこそ、その鎖を断ち切ることができる」


 意識が戻ると、セレナの頬には一筋の涙が伝っていた。


 「……私、ようやくすべてを知った。
 だから、アグレイス。私たちの手で、国を変えよう」


 アグレイスは静かに頷き、彼女の手を取る。


 「この真実を知ったからこそ、今度こそ、“共に治める”という理想を形にしよう」


 そのとき、水晶の台座が砕け、空へと散っていく。
 霧が晴れ、神殿の外へと通じる新たな道が現れた。

 それは、古き封印が解けたことを意味していた。

 かつて神に約束されたはずの“二人で紡ぐ統治”――
 今、その契約が、ふたりの手によって書き換えられようとしていた。


 (この道の先には、争いもあるだろう。けれど、私はもう迷わない)