そこは、静寂の空間だった。
幾何学模様が描かれた白い床、中央に浮かぶ水晶の台座――その上に、一本の“黒い書”があった。
「……あれは……?」
「これは、記憶を封じる契約書だ」
振り向くと、神殿の奥に佇んでいたのは、一人の女性。
透き通る白髪と、瞳に宿る蒼の光。まるでセレナに似た雰囲気を纏っていた。
「私は“初代番”……この神域に魂を留める者」
その言葉に、空気が凍るような緊張が走る。
「番の力とは、本来“時を越えて継承される意志”。
この契約の書は、その継承者に試練を与え、真実を授けるために存在するのです」
セレナが口を開く。
「……私は、知りたい。この力の意味を。
なぜ私が選ばれたのか。そして――この国が、これからどうあるべきなのか」
初代番は、頷き、黒の書へと手をかざした。
次の瞬間、セレナの意識はふっと遠のいた。



