「殿下! 南方にて、結界のひとつが崩壊したとの報が!」
伝令の騎士が息を切らせて駆け込んできた。
「結界が……!」
セレナの背筋に冷たいものが走る。
ロズベルドはすぐに結界石のひとつに触れ、魔力の波を探った。
「……これは、内側から崩された痕跡です。
魔族ではなく、“人の手”によるもの」
その言葉に、アグレイスの瞳が鋭く光る。
「裏切り者がいるということか……。王宮内か、それとも外の勢力か」
誰が何のために封印を壊そうとしているのか。
それはもはや、偶然や自然災害ではなかった。
セレナは胸の奥に、ひとつの予感を覚える。
それはまだ形にならないが、何か、ずっと以前から動いていた“意思”が、この世界の奥底で蠢いているような感覚だった。
(まるで、私がこの国に来るずっと前から……すべてが仕組まれていたような)
「……アグレイス、ロズベルド様。
一つお願いがあります。私に、“封印の地”を見せてください」
その言葉に、室内の空気がわずかにざわめいた。
アグレイスはセレナを見つめる。その瞳には、驚きと、誇らしさ、そして深い憂いが混じっていた。



