その夜、セレナは静かに夢を見た。
それは、まだ自分が幼い少女だったころのこと。
誰にも必要とされず、王宮の片隅で膝を抱えて泣いていたあの日の記憶。
(どうして、私には“居場所”がないんだろう……)
そう呟いた幼い声に、ふわりと、あたたかいものが寄り添った。
毛並みはふかふかで、銀の光をまとっていて、温度が優しかった。
『ここにいる。ひとりじゃない』
(……うそ、私には……誰もいないのに)
『おまえが気づかなくても、わたしはいる。ずっと、ここに』
その声は、今のアグレイスの声と同じだった。
でもそのときのセレナは、まだ“それ”が誰かもわからなかった。



