夕暮れの空が、薄紅に染まりはじめていた。
王宮の塔の最上階にある〈星読の間〉では、魔導士たちが集まり、星図を読み解いていた。
その中心には、セレナとアグレイス、そしてロズベルドの姿があった。
「――見てください、この星の軌道の揺れ。
これは、北の封印と“王の番”との共鳴によって、運命の線がねじれ始めている証です」
ロズベルドが指し示した天球儀の一部は、わずかに光を乱している。
本来、季節とともに穏やかに流れるはずの“命の星”の動きが、不規則に震えていた。
「これは……“災厄”の兆候?」
セレナがそっと問うと、ロズベルドは深く頷いた。
「かつて、このような星の歪みがあったのは、数百年前、“災いの王”と呼ばれた魔王ゼグレアが封印された時だけです。
……いま、再び“災い”が形を取りつつある」
言葉の意味が、冷たく胸に落ちる。
アグレイスは腕を組み、考え込むように眉を寄せた。
「この封印が完全に解かれれば……ただの王国の問題では済まなくなる。
東の帝国、西の連邦、そして南の精霊域――すべての均衡が崩れ、戦争が始まるだろう」
セレナはその光景を想像し、唇をかみしめた。
(平和を守るために、私は何をすればいい? 私に何ができる?)
そのとき、不意に部屋の扉が大きく開かれた。



