蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 漆黒の階段を下りるたび、空気が重く、濃くなっていくのをセレナは感じていた。まるで空間そのものが感情を持ち、ふたりを試しているかのように。

 やがて辿り着いたのは、一面が鏡のような透明な水晶で覆われた広間だった。天も地も、四方もすべてが光の反射に包まれ、現実の境界線が曖昧になる。

 その中央に、ひとつの石碑が浮かんでいた。

 そして、空間に響く“声”――それは、もうセレナの中の記憶ではなく、この場に確かに存在する何者かだった。


 『継承者と、その伴侶よ。ここは審判の間。おまえたちが選ぶ未来に、資格があるかを試す場』


 アグレイスが思わず剣の柄に手をかけるが、その刃は無力だった。


 『力で抗うな。これは心の審判。おまえたち自身が、その心で答えるのだ』


 ふたりの足元が、ゆっくりと光に溶けていく。世界が、ふたつに分かれる。

 セレナは、ひとりで真っ白な空間に立っていた。何もない空虚な場所。けれど、遠くから誰かの泣き声が聞こえる。


 (この声……)


 耳を澄ますと、それは小さな少女――幼い自分自身の声だった。