セレナが戻ったとき、王宮の空気は一変していた。
厳重に守られたはずの結界が、ほんのわずかに揺らぎ、魔術防壁に軋みのようなものが生じている。
まるで遠い雷鳴のような、耳鳴りにも似た魔力の共鳴が空間を走っていた。
「状況は?」
駆け寄ったセレナに、アグレイスは短く息を吐いた。
「不明だ。だが“外”から来たものではない。内側、つまり――この王宮の内部に潜んでいた魔力の震えだ」
「内側……?」
セレナの胸の奥が、ずしりと重くなる。
さっき手にした本。古い封印文書の一部。その中に書かれていた一節が脳裏によぎった。
【聖銀の乙女は時を越えて呼び覚まされ、血の繋がりをもって“鍵”を開く。
鍵は、世界の因果を改竄する“扉”へと通じる。】
(まさか……私が“鍵”なの?)



