「セレナ様!?」
不意に響いた声に、セレナは振り返る。そこに立っていたのは、王宮付きの魔術師・リュシアンだった。
「ここは……っ、妃殿下でも入っては――」
けれど、リュシアンは気づいた。
セレナの背に浮かぶ紋様、そして扉の反応。これは偶然などではない。
「あなたは……本当に、“あの血筋”の……」
言葉を失うリュシアンの瞳の中で、静かにひとつの真実が形を取り始める。
そして、書庫の奥から漏れ出した光の中――一冊の本が、まるで呼応するかのように、ふわりと空中に浮かび上がった。
セレナの視線がそれを捉えた瞬間、胸の奥が熱を持ったようにざわめく。
(これが……私に繋がる何か?)
けれどそのとき、遠くから警鐘のような魔力の衝撃が王宮を包んだ。
「……っ……」
リュシアンがすぐに防御結界を展開する。
「何かが――王宮の外から、強力な干渉魔法が飛んできた!これは……ただ事じゃない!」
「戻らないと……!」
セレナは本を手にしながら立ち上がる。
(もう、何も知らないままでいられない。私は……真実を知る)
その背に、小さく浮かび上がった銀の紋様が、確かな覚醒の証を刻んでいた。



