「……感じるわ。この胸の奥、何かが目覚めようとしてる」
手を胸元に当てると、そこから脈打つような温もりが広がった。
血の記憶。遠い昔に封じられ、眠っていたものが、静かに扉を開けようとしていた。
そこへ、アグレイスが姿を見せる。
「……やはり、来ていたんだな」
「うん。落ち着かなくて。自分の中で何かが変わっていくのが、怖くて……でも逃げたくなくて」
彼はそっと彼女の肩に手を置く。
その手は強くもなく、ただ「一緒にいる」と語るように、やさしくそこにあった。
「セレナ。お前の中に眠る力がどんなものであろうと、俺は恐れない。
もしそれが、この国に嵐を呼ぶとしても――お前を信じる」
セレナはその言葉を噛みしめるように目を閉じた。
そして静かに、手のひらを空へと差し出す。
すると――空気が震え、彼女の周囲に淡い光の粒子が浮かび上がった。
風が舞い、花がさざめき、まるで星のかけらが彼女を祝福するかのように集まっていく。
その光景に、アグレイスは目を見開いた。



