ざわ……ざわ……。
「……本当に来たんだ……王妃が……」
「しかもひとりで……」
「ご懐妊してるって噂は本当なのか?」
広場に集まった民たちが、声をひそめて騒ぎ始める。
セレナは壇の中央に立ち、深く息を吸った。風が、白い衣を優しく揺らす。
「皆さま。お集まりくださり、ありがとうございます」
その声は、大きくはなかったが、静けさの中で確かに届いた。
「この場を借りて、皆さまにお伝えしたいことがあります」
視線は、ひとりひとりを包むように。
「私は、この国の王族として、そして一人の人間として、皆さまの声に耳を傾けたいと願っています」
一瞬、沈黙が広がった。
セレナは続ける。
「戦火で大切な人を失った方がいる。家を焼かれ、今も苦しい暮らしをしている方がいる。……それでも、ここにこうして立ち続けているあなたたちに、私は心から敬意を表したいのです」
ざわ……ざわ……。
そのとき、一人の老女が前に出た。



