神官長は、深く頭を垂れて宣言した。
「ここに、神獣アグレイスの番、第二王女セレナ=ヴィアル殿下を神の器と認めます」
その声と同時に、聖堂内の空気がぴんと張り詰めた。
誰もが一斉に視線をセレナへ向ける。
驚き、困惑、そして……疑念。
「まさか……あの方が」
「第一王女様ではなく……?」
貴族たちはざわめきながらも、表情の裏では計算を始めていた。
“無名の王女”だった少女が、突如として“神の伴侶”になったのだ。
それは、力と立場が一変する瞬間だった。
一方で、セレナの胸はただ静かだった。
目の前のアグレイスを見つめながら、彼女は問いかける。
「……本当に、私でよかったのですか?」
アグレイスは答えず、ただその顔を彼女に近づけ――額を、そっと触れさせた。
その体温は、ひどく優しく、熱を持っていた。
心の奥に、また声が響く。
『わたしの半身。そなたの在るところが、わたしの居場所だ』
その言葉に、胸がきゅっと締め付けられた。
これは、恋とは少し違う。けれど、恋の種になるもの。
(この人は、私を一人にしなかった。ずっと、見つけてくれようとしていた)
セレナの目尻に、そっと涙が滲んだ。



