「これは我が王家にとって、そして民にとって、新たな光の誕生である」
すると――
「殿下、ご容赦を。妃殿下が御懐妊されたことは誠に喜ばしい。しかし、懐妊された身での政務参加は、かえって王家の権威を損なうのでは?」
その声を上げたのは、バルテリウス侯爵だった。
彼の顔は礼節を保ちながらも、どこか冷笑を含んでいる。
セレナはゆっくりと立ち上がった。
「そのご心配はありがたく受け止めます、バルテリウス卿。ですが、責務を放棄することはございません」
場内が静まり返る。
「私の身に命を宿していることは、決して“弱さ”ではありません。それは新しい時代の象徴であり、未来を信じる力でもあります」
毅然としたその声に、一瞬、バルテリウスの目がわずかに揺れた。
アグレイスが微かに口元を綻ばせる。
「……妃の言葉は、我が意志と同じ。異議のある者は、王そのものに異を唱えることになる」
それは、明確な“盾”の宣言だった。
会議が終わった後、セレナはゆっくりと玉座の間を歩いていた。
(私は……これから、何度でも試される)
だがそのたびに、自分の中の命が、微かにでも力強く息づいていることを思い出す。
(この子と、アグレイスと、未来のために――私は、立ち続ける)
その目は、静かな決意を湛えていた。
王妃としての姿勢を貴族たちに示して数日後、セレナは侍女エリナとともに王城を出た。



