蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 「……ありがとう、セレナ。君がここにいてくれて、本当に良かった」


 彼の目の奥には、戦場では見せなかった、ひとりの青年の弱さと安堵があった。

 セレナはその手を強く握り返し、静かに告げた。


 「私、あなたに言いたいことがあるの」


 アグレイスが彼女を見つめ返す。


 「……何?」


 セレナは、深く息を吸い込み、両手を彼の手に重ねた。


 「私……赤ちゃんができたの」


 その瞬間、アグレイスの目が大きく見開かれた。


 「……本当に?」

 「最近少し体調が優れない日が続いていたから医師にも診てもらったの。そしたら……まだ小さな命だけど、確かに私の中にいるのよ」


 彼は、言葉を失ったまま、何度もうなずいた。
 そして、震える指先で、彼女の手を両手で包み込んだ。


 「……ありがとう。セレナ。命を、守ってくれて」


 涙が、彼の頬を静かに伝った。

 セレナは、そっとその涙を指先で拭った。


 「これからは、もう一人じゃない。あなたも、私も。そしてこの子も」


 アグレイスは、深く、ゆっくりと頷いた。


 「この子が、平和な国で生きられるように……君と一緒に、未来をつくっていこう」


 その言葉に、セレナは微笑んだ。