砦では、セレナが縫合を終えたばかりの兵士の手を握っていた。
「よく……頑張ったわ。もう大丈夫、もう安全だから……」
そのとき、扉が開いた。
「アグレイス様が戻られました!」
その言葉に、セレナの心が跳ね上がる。
手を止め、血にまみれたガウンのまま駆け出した。
砦の中庭、陽の光の中――そこに彼がいた。
傷だらけの鎧。疲れ果てた表情。けれど、その瞳は確かに生きていた。
「セレナ……」
「……アグレイス!」
彼女はその胸に飛び込み、彼の背に手を回した。
「よかった……無事で……」
「帰ってきた。……君のところへ」
彼の声はかすれていたが、その温もりは確かだった。
セレナは彼の胸に顔をうずめたまま、涙を流した。
「もう、どこにも行かないで。あなたがいない時間は……怖かった……」
「行かない。もう絶対に離さない。君も……この国も」
アグレイスの言葉に、セレナは深くうなずく。
こうして、戦いは終わった。
けれど、ふたりの物語は――ここからが本当の始まりだった。



