蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜




 円形の祭壇には、王族と高位貴族だけが列席を許され、
 その中心には、第一王女リディアと第二王女セレナが並んで立っていた。


「選ばれるのは、私。そうでなければ、この国の威信は揺らぐわ」


 リディアは横目でセレナを見やり、静かに笑う。
 だが、セレナはその視線を避けることなく、まっすぐ前を見ていた。


(私はただ……この胸の中にいる誰かの声を、信じたい)



 そして、神官長の呼びかけとともに、
 神殿の空気がすうっと冷たく澄みわたる。


 ――やって来た。

 誰もが息を呑んだ。
 銀と蒼の神獣・アグレイスが、神殿の奥より現れる。

 重なる足音は静かで、けれど空気を震わせるほどの威厳を纏っていた。


「……本当に、存在したのね」


 アリエットでさえ、言葉を失った。

 そのまま神獣は、ゆっくりと歩みを進め――

 セレナの前で、静かに膝を折った。

 その瞬間、神官たちは驚愕と敬意を入り混ぜた声を漏らし、
 聖殿の奥では、蒼銀の光がふわりと舞い上がった。


「……選ばれた……?」


 セレナ自身が、信じられないといったように呟いた。

 だが次の瞬間、アグレイスの額から淡い光が伸び、
 彼女の胸の上――心臓の位置に、小さな紋が刻まれた。

 蒼銀の輝きが淡く瞬き、静かに消える。


『契約は果たされた。おまえこそ、我が番』