リディアは、しばし黙していた。だが、そのまなざしは次第に、昔の姉のものへと変わっていく。
「……私は、ずっと優秀でいなければならなかった。誰よりも賢く、美しく、間違えず。……だから、本音なんて誰にも見せられなかったわ」
「それでも、私は姉さまが好きでした。怖かったけれど、憧れていました」
セレナの言葉に、リディアの指先がわずかに震える。
「……あなたに、『妃』の座が渡されたとき。私は、自分が否定されたように感じた。……でも今はわかる。否定されたのではなく、“止まっていた”のは私だったのね」
「止まっていた時間を、もう一度、私たちで動かしませんか?」
セレナは、そっと手を差し出す。
リディアはその手を見つめ、ゆっくりと――だが確かに、指先を重ねた。
「……ほんとうに、変わったのね。あなた」
「まだ不安はあります。でも、私はもう――進みたい。自分の意志で」
微笑んだセレナのその瞳に、リディアは何かを見出したように、ふっと小さく笑った。
「その覚悟、見届けさせてもらうわ。妹としてでなく、ひとりの女性として」
ふたりの手が、そっと強く握られる。



