夕暮れが訪れる頃、広場の空気は朝とはまるで違っていた。
誰もがまだ不安を抱えながらも、少しだけ目を上げていた。
セレナは、最後に人々に向かって頭を下げる。
「今日いただいた声は、必ず王宮に持ち帰り、正面から向き合います。どうか……この国を、諦めないでください」
その声には、震えがなかった。
彼女の中で、妃としての意志が一つ、形を得たからだ。
その夜、セレナは一人、書簡をしたためていた。
【――今日、初めて誰かのために立った実感がありました。
まだ未熟な私ですが、この国に生きる人々の顔を思い出すたび、迷いを超える力が湧いてきます。
私は、この道を信じて進みます。アグレイス様、あなたと共に。】
彼女の筆跡は、いつもよりほんの少しだけ力強かった。



