「セレナ=ヴィアル様。……お会いするのは初めてですね」
その目には驚きも軽蔑もなかった。ただ、穏やかに真実を見極めようとするような眼差しだった。
「昨夜、聖獣が現れたそうですね」
「……はい。でも、あれが何だったのか、私にも……」
「神獣・アグレイス。代々の神器の守護者であり、王家の血に最も近い“真なる器”にしか姿を現さぬ存在です」
セレナは思わず息をのんだ。
やはり、あの幻のような獣は、神話の中だけの存在ではなかった。
「あなたは、何か“声”を聞きませんでしたか?」
「……ええ。確かに、聞こえました。誰のものでもないけれど、私の心にまっすぐ届くような……そんな声でした」
「それが、神との契約の兆しです。神獣が“番”としてあなたを選びかけているのです」
「……“番”?」
その響きに、セレナの胸が小さく跳ねた。
まるで恋のように、深く結びつく関係を指すその言葉に、彼女はまだ意味を理解しきれていなかった。



