そのとき、後ろから静かな声が聞こえた。
「セレナ」
振り返ると、アグレイスがゆったりと歩み寄ってきた。彼の深い蒼の瞳が、穏やかであたたかな光をたたえている。
彼は少し照れくさそうに笑みを浮かべながらも、手を差し伸べた。
「庭での散歩に付き合ってくれないか?」
その声に、セレナの胸が小さく高鳴る。
(こんなにも近くにいてくれるのに、どうしてこんなに心が安らぐんだろう)
彼女は迷わずその手を取り、ふたりはゆっくりと並んで歩き始める。歩幅を合わせ、自然に寄り添う距離に、言葉にならない安心感が広がっていく。
「昨夜、誓いを交わしてから、君の心に何か変化はあったか?」
アグレイスの問いかけに、セレナはゆっくりと目を閉じる。
(怖さはまだ消えない。けれど、あなたの存在が恐れをやわらげてくれる。これから何があっても、あなたがいれば大丈夫)
「ええ……まだ不安はあるけれど、あなたがそばにいてくれるから、怖くないって思えるの」
彼女の言葉に、アグレイスはそっと微笑み、優しく手を握り返す。
「君が強くなることも大事だが、何より僕が君の支えになることが大切だ」
その言葉が胸に染み込み、セレナはほんの少し頬を染めた。彼の温かな掌に包まれ、心の奥に静かな安堵が広がっていく。



